2026.07.16
AIに利用者の情報を入れて大丈夫?無料版と有料版の違い
「正しく線を引けば、AIは使える」
「利用者さんの名前、AIに入れちゃったんですけど…大丈夫でしたか?」
研修のあと、いちばん多く、そして少し不安そうに聞かれるのがこの質問です。
結論から、はっきりお伝えします。
無料版のAIに、利用者さんの
個人情報を入れるのは「原則NG」です。
ただし、これは「AIを使うな」という話ではありません。正しく線を引けば、AIは安全に使えます。その線引きを、この記事で具体的にお伝えします。
1. なぜ無料版はNGなのか
理由は3つあります。
- 入力した内容が「AIの学習」に使われることがある(=あなたが入れた情報が、AIの賢さの材料になる)
- 人間の担当者が、内容を目で確認することがある(品質チェックのため)
- 消したつもりでも、一定期間は残ることがある
とくに知っておいていただきたいのが、あるサービスの無料版では、人の目で確認されたやりとりは、最長で3年間保存されると定められている点です(2026年7月時点)。
「ちょっと相談しただけ」のつもりでも、利用者さんの氏名や病名が、知らないところで保存され、人の目に触れる可能性がある──。これは、守秘義務を負う私たちにとって、見過ごせないことです。
2. 無料版と有料版(法人版)の違い
では有料版なら何でも安全かというと、正確にはこうです。「有料の”法人向け”プラン」なら、入力データは学習に使われない設計になっています。
| 無料版 | 有料の法人版 (ChatGPT Business等/Google Workspace) |
|
|---|---|---|
| 入力データの学習利用 | 使われることがある (設定でオフにできる場合も) |
使われない(規約・契約で保証) |
| 人によるレビュー | 行われることがある | 組織外では行われない |
| 個人情報を入れる用途に | ❌ 原則NG | ⭕ 相対的に安全(ただし下記の注意) |
なお、前回(第2回)お伝えしたGoogle Workspaceは、この「法人版」にあたります。Business Standard以上のプランでは、入力データを組織外の学習に使わず、人によるレビューもしないと明言されています。
3. 入れていい情報/ダメな情報の線引き
いちばん実務的な部分です。何を入れてはいけないのか、はっきりさせましょう。
❌ 入れてはいけない(=個人が特定できる情報)
- 氏名(「A様」も、他の情報と組み合わさると特定されうる)
- 住所・生年月日・電話番号
- 病名・診断名・具体的な処置内容
- 家族構成、勤務先、細かい生活歴
- 顔写真、事業所名つきの具体的エピソード
⭕ 匿名化すれば入れてよい
- 「70代男性・独居・COPD」のように、個人が特定できない形に置き換える
- 固有名詞(人名・地名・事業所名)は伏せる
- 相談したいのは”状況”であって”個人”ではない、と切り分ける
4. 「匿名化」というひと手間
AIに相談したいことの多くは、実は個人名がなくても成立します。
❌ そのまま入れる:
「田中花子さん(85歳・福岡市南区在住)が最近……」
⭕ 匿名化して入れる:
「80代女性・独居の利用者が最近……」
このひと手間で、相談の質はほとんど変わらないまま、リスクだけを大きく下げられます。慣れれば数秒です。
5. 事業所として決めておく5つのルール
いちばん大事なのは、これを個人の判断に委ねないことです。「気をつけてね」では事故は防げません。事業所として、次を決めておきましょう。
- ✅ 無料版に個人情報を入れないを明文化する
- ✅ 個人情報を扱う用途では、法人版(学習オフ)に統一する
- ✅ 誰が・何に使ってよいかの範囲を決める
- ✅ 入力前に匿名化する手順を共有する
- ✅ 既存の情報管理規程・守秘義務と整合させる
第1回でお伝えした「管理者の役割」のうち、情報管理と守秘義務は、まさにこのAI時代に直結します。ツールが新しくなっても、利用者さんの情報を守るという原則は変わりません。
まとめ
- ✅ 無料版への個人情報入力は原則NG(学習利用・人のレビュー・保存のリスク)
- ✅ 有料の法人版は学習に使われない設計。ただしクラウドゆえリスクは完全にはゼロにならない
- ✅ 個人が特定できる情報は入れない。匿名化のひと手間で安全に使える
- ✅ 個人任せにせず、事業所のルールとして決める
「怖いから使わない」でも「気にせず何でも入れる」でもなく、正しく線を引いて使う。それが、これからのケアの現場のスタンダードになります。
次回予告|シリーズ「ケアの現場のAI最前線」第4回
62ページの通知を読む前に要約する。NotebookLM入門
事業所の方へ
「AIの利用ルールを、どう決めればいいか分からない」
「安全に使える体制を整えたい」
アイランドケアでは、自らの現場でAIを使いはじめており、システム面では社内ポータル・チャットボット・マニュアル整備までを実践しています。同じ悩みを持つ事業者の皆さまへ、その経験をお伝えしています。ご相談はお問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
出典・参考資料
- OpenAI「Enterprise privacy」
https://chatgpt.com/business/enterprise/ - Google「Google Workspace のデータ保護」
https://workspace.google.co.jp/ - 中川路 匠「AIを現場に活かす」(一般社団法人全国介護事業者連盟 障がい福祉事業部会 福岡県支部)
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