2026.09.02

訪問介護のヘルパーができること・できないこと

「爪切りをお願いしたら断られた」「薬をセットしてもらえると思っていたのに」――訪問介護の現場では、ご家族から驚かれることが少なくありません。

厚生労働省が「介護職員が原則として行ってよい」と整理している行為は、2005年の最初の通知では11項目でしたが、2022年に19項目が追加され、2025年3月には全体像を示すガイドラインが策定され、さらに2025年12月にも新しい項目が追加されました。20年かけて少しずつ広がってきた線引きは、今もなお更新され続けています。

私たちアイランドケアは、訪問看護「レスピケアナース」と訪問介護「ホームヘルプ卵」の両方を運営しています。日々の現場で最もよくいただくご質問のひとつが、「ヘルパーさんに、どこまでお願いできますか」というものです。

この線引きは、実は法律そのものではなく、厚生労働省が医師法・歯科医師法・保健師助産師看護師法の「解釈」を通知という形で示すことで作られてきました。ご本人・ご家族が安心してサービスを選び、介護職員が委縮せずに必要な支援を行えるよう、私たちが把握している最新の内容を整理してお伝えします。

目次

  1. そもそも「医行為」とは何か
  2. 20年かけて広がってきた線引き
  3. ヘルパーができること一覧
  4. 「できる」には条件がある
  5. アイランドケアの現場から
  6. まとめ

1. そもそも「医行為」とは何か

医師法第17条、歯科医師法第17条、保健師助産師看護師法第31条は、医師・歯科医師・看護師等の免許を持たない人が「医業」を行うことを禁止しています。

ここでいう「医業」とは、厚生労働省の通知によれば

当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うこと

と解釈されています(平成17年7月26日付 医政発第0726005号)。

つまり、「専門的な判断や技術が必要かどうか」がポイントであり、体温を測る・爪を切るといった日常的な行為であっても、状態によっては医行為とみなされる場合があります。反対に言えば、状態が安定していて専門的な管理が不要であれば、資格を持たない介護職員が行っても差し支えない、という整理です。

2. 20年かけて広がってきた線引き

この「原則として医行為ではない行為」は、一度に決まったものではなく、次のように段階的に広げられてきました。

時期 通知 主な内容
2005年7月26日 医政発第0726005号 体温・血圧測定、軟膏塗布や湿布貼付などの服薬介助、爪切り、口腔ケア、耳垢除去、ストマ排泄物の廃棄、自己導尿の補助、市販グリセリン浣腸など11項目
2022年12月1日 医政発1201第4号(その2) インスリン注射の準備・片付け、持続血糖測定、経管栄養の準備・片付け、喀痰吸引器の水交換、在宅酸素療法の準備、膀胱留置カテーテルの尿廃棄・尿量確認、半自動血圧計、義歯の着脱など19項目
2025年3月 「原則として医行為ではない行為」ガイドライン 上記の内容を整理し、介護職員が安全に実施するための手順や留意点をまとめて一冊のガイドラインに
2025年12月26日 医政発1226第12号(その3) お薬カレンダーへの薬剤セット、PTPシートからの薬剤取り出し、専門的な管理が不要と医師・看護職員が確認した皮膚への湿布貼付、蓄尿バッグの破損・尿漏れ時等に限った未使用バッグへの接続(医師・看護職員の立会いの下)などを追加

つまり「ヘルパーさんができること」は年々少しずつ広がっており、数年前の情報のままだと現状と合わないことがあります。ご家族から「前はできないと言われた」というお話をいただいた際も、通知の更新を踏まえて確認し直すことがあります。

3. ヘルパーができること一覧

2005年・2022年・2025年の通知に列挙されている行為を、分野ごとに整理しました(実施には次章の条件が伴います)。

体温・血圧・血中酸素の測定

  • 水銀体温計・電子体温計での腋下検温、耳式電子体温計での外耳道検温
  • 自動血圧測定器・半自動血圧測定器(ポンプ式含む)での血圧測定
  • 新生児以外かつ入院治療が不要な人へのパルスオキシメーター装着と数値確認

血糖・インスリン関連

  • 持続血糖測定器のセンサー貼付、測定値の読み取り
  • 医師が指示したタイミングでのインスリン注射の声かけ・見守り、注射器の受け渡しや片付け(針を抜く・処分する行為を除く)
  • 血糖値が医師の指示範囲と合っているかの確認、注射器の目盛りの読み取り

経管栄養

  • 皮膚に発赤がなく専門的管理が不要な場合の、経鼻胃管を留めるテープの貼り直し
  • 栄養剤を注入・停止する行為を除く準備と片付け(チューブの胃への挿入確認や胃ろう・腸ろうの状態確認、注入内容の判断は医師・看護職員が行う)

喀痰吸引・在宅酸素療法・在宅人工呼吸器

  • 吸引器にたまった汚水の廃棄、吸引器や吸引チューブ洗浄用の水の補充(吸引の操作そのものは対象外)
  • 酸素マスクや経鼻カニューレを未装着の状態での、医師の指示に基づく流量設定や装着準備、片付け(ただし、酸素吸入の開始〈流入中のマスクや経鼻カニューレの装着を含む〉、停止〈装着中のマスクや経鼻カニューレの除去を含む〉は、医師・看護職員・患者本人のみが行うこと)
  • 加湿瓶の蒸留水交換や機器の拭き取りなどの環境整備
  • 自力でマスク・カニューレを戻せない人が一時的に酸素から外れてしまった場合の、元の位置への戻し
  • 医師または看護職員の立会いの下での、在宅人工呼吸器使用者の体位変換時の位置調整

膀胱留置カテーテル

  • 蓄尿バッグからの尿廃棄(DIBキャップの開閉を含む)
  • 尿量・尿の色の確認(記録のみ。数値からの医学的判断は対象外)
  • テープが外れた際の、あらかじめ示された位置への貼り直し
  • 専門的管理が不要と医師・看護職員が確認した場合の陰部洗浄
  • 蓄尿バッグの破損による尿漏れを確認したときや、バッグがカテーテルから外れたときに限り、医師・看護職員の立会いの下で未開封・未使用の蓄尿バッグを接続すること(定期的な交換を認めるものではない/2025年12月追加)

排泄・口腔ケア・その他

  • ストマ装具のパウチにたまった排泄物の廃棄(肌に接着したパウチの交換は対象外)
  • 自己導尿の補助(カテーテルの準備、体位の保持など)
  • 規格の範囲内の市販ディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いた浣腸
  • 爪に異常がなく、周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、糖尿病などの専門的管理が不要な場合の爪切り・爪やすり
  • 重度の歯周病等がない場合の、歯ブラシや綿棒を使った日常的な口腔清拭
  • 耳垢の除去(耳垢塞栓の除去は対象外)
  • 有床義歯(入れ歯)の着脱・洗浄
  • 軽微な切り傷・擦り傷・やけどへの、専門的な判断や技術を要しない処置(汚れたガーゼの交換を含む)
  • とろみ食を含む食事の介助

服薬等介助

条件を満たした場合に、以下の医薬品の使用を介助すること

  • 皮膚への軟膏塗布(褥瘡の処置を除く)
  • 専門的な管理が不要であることを医師若しくは看護職員があらかじめ確認した皮膚への、湿布の貼付
  • 点眼薬の点眼
  • 一包化された内用薬の内服(舌下錠を含む)
  • 坐薬の挿入、鼻腔粘膜への薬剤噴霧
  • 水虫や爪白癬の爪への軟膏・外用液の塗布(褥瘡の処置を除く)
  • 吸入薬の吸入、分包された液剤の内服
  • お薬カレンダーへの薬剤セット、PTPシートからの薬剤の取り出し(2025年12月追加)

4. 「できる」には条件がある

一覧を見ると幅広く感じられますが、どの行為にも共通する前提があります。

まず、病状が不安定で専門的な管理が必要な場合には、同じ行為でも医行為とみなされることがあります。そのため事業者は、サービス担当者会議などの場で、医師・歯科医師・看護職員に専門的な管理の要否を確認することが求められています。

服薬等の介助については、特に次の3条件をすべて満たしていることが前提です。

  1. 入院・入所して治療する必要がなく、容態が安定していること
  2. 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師や看護職員による連続的な経過観察が必要な状態ではないこと
  3. 誤嚥の可能性など、使用方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと

また、血圧・血糖・パルスオキシメーターなどの測定値をもとに「薬を飲ませるべきか」「受診が必要か」といった医学的な判断を下すこと自体は医行為であり、介護職員が行うことはできません。あらかじめ示された範囲を外れる数値が出た場合は、速やかに医師・看護職員に報告する役割が介護職員に求められています。

厚生労働省の通知は、看護職員による実施計画がある場合はその計画に沿って行い、結果を報告・相談することで密接に連携するよう求めています。加えて、今回の整理はあくまで医師法等の解釈を示すものであり、万一事故が起きた場合の刑事上・民事上の責任は別途判断される、とも明記されています。

原則として医行為ではないとされている行為であっても、それは「無条件でどんな状態の方にも行ってよい」という意味ではありません。あくまで状態が安定していて専門的な管理が不要であることが前提であり、医師・看護職員による状態確認と、介護職員との日々の連携があってはじめて成り立つ整理だとご理解ください。

5. アイランドケアの現場から

私たちが訪問看護と訪問介護の両方を運営していることは、この線引きに向き合ううえで大きな強みだと感じています。看護職員があらかじめ実施計画を立て、ヘルパーがその計画に沿って対応し、気になる変化があればすぐに看護職員へ報告・相談する――この連携が同じ法人の中で完結できるからです。

一方で、ガイドラインが更新されるたびに、現場の職員一人ひとりに正確な情報を届け続ける難しさも実感しています。「できる」という情報だけが独り歩きすると、専門的な管理が必要な状態の方にまで同じように対応してしまう危険があります。私たちは、サービス担当者会議や日々の申し送りの中で、お一人お一人の状態に応じて「今のこの方に必要な管理レベルはどこか」を確認しながら支援することを大切にしています。

まとめ

「ヘルパーさんに何をお願いできるか」は、行為の名前だけでなく、ご本人の状態や医師・看護職員との連携体制によって変わります。原則としてできるとされる行為にも、括弧書きの除外規定や「ただし書き」の例外条件が細かく定められており、状態確認や医療職の事前確認が前提になっている点が少なくありません。判断に迷ったときは、遠慮なく担当のケアマネジャーや看護職員にご相談ください。

ご家族にとっては分かりにくい制度ですが、正しく理解しておくことで、必要な支援を安心して依頼できるようになります。

アイランドケアへのご相談

訪問介護「ホームヘルプ卵」、訪問看護「レスピケアナース」では、看護職員と介護職員が連携しながら、お一人お一人の状態に合わせたサービスをご提案しています。「これはお願いできるのだろうか」という疑問がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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出典・参考資料

※本記事は2026年9月2日時点で公表されている情報をもとに作成しています。解釈通知は今後も改正される可能性があるため、最新の内容は厚生労働省公式サイトでご確認ください。