2026.07.18

AIで個別支援計画は作れるか——「型」にはめない使い方

シリーズ「ケアの現場のAI最前線」 第5回

AIは「型」ではなく「時間」を生むために使う

📌 本記事は2026年7月17日時点の見解です。AIの仕様は頻繁に更新されます。導入・運用の際は各サービスの公式情報をご確認ください。

「AIで、個別支援計画って作れますか?」

研修でよくいただく質問です。答えは「作れます」。ただし、その前に、問いを立て直す必要があります。

“AIに計画を作らせる”のか。それとも”AIに手伝ってもらって、自分が仕上げる”のか。この違いが、すべてを分けます。

目次

  1. まず、計画を作る「責任」は誰にあるか
  2. では、AIに何ができるのか
  3. AIに渡す材料と、プロンプトの例
  4. いちばん大事な警鐘:「型」にはめないこと
  5. 使う前の絶対ルール(個人情報)

1. まず、計画を作る「責任」は誰にあるか

個別支援計画の作成責任は、サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者(サビ管・児発管)にあります。そして、その前提として本人・ご家族との面談によるアセスメントが法令上求められています。

つまり、「その人が何を望み、どう生きたいのか」を掴む仕事は、AIには代われません。ここは人が、本人と向き合ってやることです。

一方で、児発管がひとりで最初から最後まで書かなければならない、という決まりはありません。他の職員と協力して作ること自体は禁じられていません。その”協力者”の一人として、AIを位置づける──これが、正しい使い方の出発点です。

2. では、AIに何ができるのか

AIは「作る主体」ではなく「補助」です。具体的には、こんな場面で力を発揮します。

  • 集めた材料をもとに、目標や支援内容の”文章案”を出す(たたき台)
  • 言いたいことは決まっているが、言葉にしづらい部分を整える
  • 書いた計画に抜け・漏れがないかチェックする
  • 専門用語を、ご家族にも伝わる表現に言い換える

たたき台をゼロから書く負担が減れば、その分、本人と向き合い、内容を練る時間が増えます。それがAIを使う目的です。

3. AIに渡す材料と、プロンプトの例

よい”文章案”を引き出すには、AIに十分な材料を渡すことが大切です。

渡す材料(例)

  • 相談支援計画
  • 前回から今回までの日々の記録
  • 前回の個別支援計画書
  • 面談や会議の記録
  • 各職種からのコメント

※対象者の特性に関する資料があると、より本人に合った案になります。

プロンプトの例

「(着目しているポイント)に基づいて、〇〇部分の個別支援計画の文章案を作成してください」

具体例:「目標の見直し時期まで半年あるため、目標は現状のまま。コミュニケーション面で、より目標に近づけた”具体的な到達目標”と”支援内容”の案を挙げてください」

大事なのは、出てきた案をそのまま使わないこと。あくまで「たたき台」。本人を知る自分の目で、必ず取捨選択し、書き換えてください。

4. いちばん大事な警鐘:「型」にはめないこと

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。

画一的な計画書は、個人を「型」にはめ込み、
その人らしさや尊厳を奪いかねません。

個別支援計画は、オーダーメイドでなくてはなりません。一人ひとりの特性、生活環境、そして「なりたい姿」に基づいた、その人だけの支援です。

AIは、放っておくと”それっぽく整った”計画を量産できてしまいます。便利です。でも、その便利さに流されて、どの利用者さんの計画も似たような文章になってしまったら──それは、支援ではなく作業です。

AIは「型」を作るためではなく、
一人ひとりに向き合う「時間」を
生むために使う。

このシリーズの第1回で「AIは時間を生むために使う」とお伝えしました。個別支援計画こそ、その原則が最も試される場面です。

5. 使う前の絶対ルール(個人情報)

個別支援計画は、個人情報のかたまりです。氏名、病名、家族構成、生活歴……。これをAIに入れるときは、前回・第3回のルールを必ず守ってください。

  • 無料版に個人情報を入れるのは原則NG
  • 使うなら法人版(学習オフ)を使う
  • できる限り匿名化してから入れる(「A様」→「80代女性・独居」など)

まとめ

  • ✅ 計画の責任はサビ管・児発管に。本人中心のアセスメントはAIに代われない
  • ✅ AIは「作る主体」ではなく補助(たたき台・整える・チェック・言い換え)
  • ✅ 十分な材料を渡し、出てきた案は必ず自分で取捨選択する
  • 画一化は尊厳を奪う。AIで”量産”しない
  • ✅ 個人情報は第3回のルールを厳守

AIで個別支援計画は作れます。でも、作るのはAIではありません。本人を知り、責任を持って仕上げるのは、いつでも私たちです。AIは、そのための時間を生んでくれる道具です。

次回予告|シリーズ「ケアの現場のAI最前線」第6回(最終回)

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出典・参考資料

  • 厚生労働省「サービス管理責任者等の役割と業務」ほか、障害福祉の実務資料
  • 中川路 匠「AIを現場に活かす」(一般社団法人全国介護事業者連盟 障がい福祉事業部会 福岡県支部)

※制度・仕様に関する内容は2026年7月17日時点の情報です。最新の内容は公式情報をご確認ください。