2026.08.03
社内ポータルとChatbotで「聞かれる」を減らす
📌 本記事は2026年8月3日時点の情報です。AI・SaaSの料金や機能・名称は頻繁に更新されます。導入・運用の際は各サービスの公式情報を必ずご確認ください。
「ちょっといいですか?」——一日のうちに、この一言で何度も手が止まっていませんか。
シリーズ「ケアの現場のAI最前線」も、いよいよ最終回です。今回のテーマは、管理者やベテラン職員に集中しがちな「スタッフからの問い合わせ」を、AIの仕組みで減らすこと。空いた時間を、本来のケアに戻す。ここまで5回でお伝えしてきた思想の、いわば着地点です。
キーワードは2つ。社内ポータルとChatbot(チャットボット)です。
目次
1. 「聞かれる」で、時間は静かに消えていく
相談してもらえること自体は、とても大切です。風通しのよさは、現場の安全にも直結します。
ただ——同じような質問に一日中応じていると、自分の作業がまったく進まない。気づけば、相談対応だけで一日が終わっている。管理者やサービス提供責任者の方なら、心当たりがあるのではないでしょうか。
相談を減らすのではなく、「人が答えなくてもいい相談」を仕組みに逃がす。そうして生まれた余白を、本当に人が向き合うべき相談へ振り向ける。今回はそのための、2つの打ち手をご紹介します。
2. 相談は3種類。うち2つは「仕組み」で減らせる
当社で職員から寄せられる相談を整理すると、だいたい次の3つに分かれました。
① 定型的な確認
法制度や労務など、調べれば分かること
② ルールの確認
社内ルールや福利厚生についての確認・相談
③ 経営・マネジメント
マネジメントや経営に関わる、答えが一つではない課題
このうち③は、人が向き合うべき相談です。ここに時間を使えるようにしたい。
一方で①と②は、「答えがすでに決まっている」相談です。だとしたら——毎回人が口頭で答えるより、もっと良いやり方があるのでは? そう考えて用意したのが、これからご紹介する社内ポータルとChatbotです。
3. 打ち手①:社内ポータル=AIでマニュアルを作る
①「定型的な確認」への答えは、マニュアルです。とはいえ、マニュアル作りは腰が重い。だから後回しになり、結局また口頭で聞かれる——この悪循環を、AIで断ち切ります。
従来のマニュアル作成とAI活用型を並べると、力の入れどころがはっきり変わります。
| 従来のやり方 | AI活用のやり方 |
|---|---|
| ① 何のマニュアルか明確にする | ① 何のマニュアルか明確にする |
| ② 業務の流れを書き出す | ② 作業しながら動画を撮影する(説明つきだと◎) |
| ③ 作業にズレがないか確認する | ③ 重要ポイントの静止画を撮る(半自動) |
| ④ 読みやすさを意識して一つひとつ清書する | ④ AIに手順書を作成してもらう(自動) |
| — | ⑤ AIに静止画を挿入してもらう(自動) |
ポイントは、「書く」から「撮る」へ発想を変えること。文章を一から書くのではなく、いつもの作業を撮影し、清書と体裁はAIに任せる。人がやるのは「実演」だけになります。
撮影とスクショには、次の2つが手軽です。
Snipping Tool(スニッピングツール) / Windows 11 標準・無料
画面の操作をそのまま動画で録画できます(Win+Shift+Rで範囲を選んで録画→MP4保存)。音声も同時に収録できるので、説明を話しながら録るだけ。※録画機能はWindows 11向けです。
Tango(タンゴ) / Chrome拡張・無料プランあり
ブラウザ上で操作するだけで、クリックした箇所を自動でスクリーンショットし、番号・ハイライト・簡単な説明つきの手順書を自動生成します。あとから編集もでき、リンクやPDFで共有可能。パソコン操作の手順書づくりが劇的に速くなります。
こうして出来たマニュアルを一か所(社内ポータル)に集めておけば、「あれどこだっけ?」がなくなります。①の相談は、ここでかなり減らせます。
4. 打ち手②:Chatbot=聞いたら答えてくれる相談窓口
マニュアルはあっても、「どこに書いてあるか分からない」「読むのが大変」という声は残ります。そこで②「ルールの確認」には、聞いたら答えてくれるChatbotを用意します。
当社では、第4回でご紹介したNotebookLM(2026年7月に「Gemini Notebook」へ名称変更)を使っています。資料をアップロードしておくと、その資料だけを根拠に答えてくれるAIです。これを、項目ごとに用意します。
会社のルール/福利厚生/車両/児童発達支援・放課後等デイの制度/生活介護/療養通所介護/訪問看護(介護保険)/訪問看護(医療)/訪問介護/居宅介護/居宅介護支援の制度……
——といった項目ごとにノートブックを作り、ポータルのボタンから該当の窓口へつなげます。
この仕組みには、口頭相談にはない良さがあります。
- 24時間、いつでも聞ける。夜勤中でも、管理者の手が空くのを待たなくていい。
- 質問した内容は、他の人からは見えない。「こんな初歩的なこと聞いていいのかな」と気兼ねせずに済みます。
- 「端的に答えてください」と添えれば、要点だけを短く返してくれます。
NotebookLM(Gemini Notebook)には、リンクを知っている人だけが閲覧・質問できる公開共有の機能があり、無料版でも使えます(2026年8月3日時点)。閲覧者は元の資料を書き換えられないので、社内向けの相談窓口として安心です。
⚠️ 個人情報の扱いには、これまで通りの注意を
クラウド上で共有する以上、リスクが完全にゼロになるわけではありません。利用者さんの実名や具体的な情報は入れない。載せる資料は制度やルールなど「個人が特定されないもの」に限る。この線引きは第3回(無料版と有料版の違い)で詳しく解説しています。そして、Chatbotの答えも、最終確認は必ず人が行ってください。
5. 最終回に、もう一度:AIは「時間」を生むために使う
社内ポータルとChatbotで、①定型的な確認と②ルールの確認を仕組みに逃がす。そうして空いた時間を、③人が向き合うべき相談や、目の前のケアへ戻す。これが今回の全体像です。
6回にわたってお伝えしてきたことは、突き詰めればひとつです。
AIは「代わりにやるもの」ではなく
「支えるもの」。
答えは出せても、何を考えるかを決めるのは人間です。
だからこそ、最終判断は必ず人間が行う。
記録や調べものにかかる時間を、AIで少しでも減らす。そうして生まれた余裕を、利用者さんやお子さんと向き合う時間にあてる。私たちは「記録のプロ」ではなく、「ケアのプロ」だからです。
まずは1つ、現場で使ってみてください。その一歩が、明日の「温かなケア」につながります。全6回、お付き合いいただきありがとうございました。
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📚 シリーズ「ケアの現場のAI最前線」全6回
- 私たちは「記録のプロ」ではなく「ケアのプロ」である
- ChatGPTとGemini、どっちを使う?
- AIに利用者の情報を入れて大丈夫?無料版と有料版の違い
- 62ページの通知を読む前に要約するNotebookLM入門
- AIで個別支援計画は作れるか——「型」にはめない使い方
- 社内ポータルとChatbotで「聞かれる」を減らす(この記事)
事業所の方へ
「うちでも社内ポータルやChatbotを作ってみたい」「何から始めればいいか一緒に考えてほしい」——そんな事業所さまへ、アイランドケアは自社で実践してきたノウハウをもとに、AI・DX導入の伴走支援を行っています。まずはお気軽にお問い合わせください。
出典・参考:講演資料「AIを現場に活かす」(全国介護事業者連盟 障がい福祉事業部会 福岡県支部 中川路 匡)/Google「NotebookLM(Gemini Notebook)」公開共有機能に関する各種報道(2025年6月・2026年7月)/Microsoft「Snipping Tool」画面録画機能/Chrome拡張「Tango」公式・各種解説記事。料金・機能・名称は2026年8月3日時点。最新情報は各公式サイトでご確認ください。